

別冊文藝春秋(通巻322号/2016年3月号)/別冊文藝春秋 電子版6号
〈青森唱歌〉
作者:秋田ひろむ(amazarashi)-
真っ白に染まる豪雪の 冬季封鎖の恐山
時化る陸奥湾の北風に 顔まで覆う外套か
突風吹きすさぶ深浦の 焼きイカ香ばし千畳敷
殿様ほどとはいかないが しばしAsahiで海望む
長い階段に腰降ろし 老婆ためいき仏ヶ浦
見よう見まねで手を合わす 信心なんてないくせに
はまなすラインの分かれ道 179と279
タバコを手向けて南無阿弥陀仏 あいつが事故って死んだ道
横浜町立中学校 今じゃひび割れた旧校舎
万年補欠のサッカー部 どこにも旅立てなかったジュブナイル
だれが名付けたか「遊園地」 どんどり山の廃工場
錆びたパイプでふくらはぎを切って 子供らあわてて葉っぱで止血
三保野川で爆竹を 鳴らせば飛んでくる変なおじさん
ぼろいママチャリが異様に速くて 殺されるかと思って必死で逃げた
はじめてのコンサートの真似事 役場に頼んで借りた公民館
50Wのギターアンプとダイエースプレー ここから世界が変わると信じてた
初恋は中学から一緒のあの子 結局実らなかったのはまあいいとして
やりまんだったとか今更いってくれるな それでもまじで好きだったんだしてよ
勇んで上京したのは二十歳だったか 気張って「俺」とか言ってたな
一人称代名詞は世の中で一番短い自己紹介 だからわいは無理してでも「わい」って言う
バンドは売れねえしバイトもかったりいし 同棲というか、わいが転がり込んだ彼女のアパート
甲斐性ないからせめて揚げたカラ揚げは すんげえうまいって喜んでくれたからこづかいを貰えたよ
なんだかんだあってふるさとに帰る事にした どこにでもよくある都落ち
首をくくれたらまだかっこがついたかもな どの面さげても母親に会える気がしねえな
ふるさとに帰ってからいろんなところに行ったよ 恐山、千畳敷、仏ヶ浦、竜飛岬、十和田湖、八甲田山
奥入瀬渓流、大湊の自衛隊、三沢の自衛隊、雲谷峠、大間崎 暇さえありゃ、っていうか暇しかなかったから車であちこち行ったよ
わいは生まれた町の事、なんにも知らねがったな 例えば今、青森市に住んでるんだけど青森空襲っていって戦時中に爆撃された事すら知らねがったじゃ
裏山の神社には、むかしむかし森に立ち入るときには木の幹に斧を引っ掛けて安全を祈願してたとか、そんな伝承があるとか、わいなんにも知らねがったじゃ
じっちゃの葬式には行けなかった いや行かなかった って事は行けなかったって事と同じだな
人が死ぬのは嫌いだよ 線香の匂いとか、親戚とか、家族団らんとか反吐が出る ほんとに反吐が出る
そういえば中学生の頃 じっちゃの財布から一万円盗んだっけな
あれきっと、今から思えば絶対ばれてたよな でも怒られた事、一度もなかったな
とっちゃもかっちゃも大分老けたけど そんな事に感傷なんかないよ
じっちゃのぶどう畑も、子供の頃飼ってた犬も あれなんて名前だったっけ?
じっちゃはいつもぶどう畑 ビニールハウスで枝切って
肥料の匂いが嫌いだった 裏小屋の鉢の裏、家の鍵の隠し場所
とっちゃが勤めてた漁業協同組合 漁港でよく遊んだな
桟橋、テトラポッド、朱色の灯台 ガキのウニの密猟は許してくれた
住宅住まいシュウメイと タケルの家に忍び込んで
迷宮組曲パクったっけな かっちゃに拳で殴られた
迷宮組曲遊んでみた 今となっちゃつまらねえ
ノスタルジーはつまらないな 大人になんてなるもんじゃねえ
はまなすライン沿いの畑 あいつのとっちゃ、トラクターで
見渡す限りの地平線 耕す命よ芽生えたもう
※はまなすラインの分かれ道 179と279
花を手向けてナンマイダ あいつが事故って死んだ道
※繰り返し×2
-
被豪雪染成雪白一片 冬季封山的恐山
北風從波濤洶湧的陸奧灣吹來 大衣竟然要蓋到臉才行啊
強陣風呼嘯而過的深浦町 烤魷魚香氣四溢的千疊敷海岸
倒也不是當起了老爺這麼誇張 只是喝著Asahi看了一會海景
倚坐在長長的階梯上 老太太嘆了口氣的佛浦
學別人雙手合十 儘管自己根本沒那個心要拜佛
玫瑰街道*的路口處 縣道179與國道279
獻菸哀悼默念南無阿彌陀佛 那傢伙就是在這條路上出車禍過世的
橫濱町立中學 如今已是剝落斑殘的舊校舍
萬年候補的足球部 哪兒也都去不了的青春
忘了是誰取名作「遊樂園」 道具山*的廢棄工廠裡
生鏽的鐵管劃傷了小腿肚 孩子們慌張地拿葉子止血
在三保野川玩爆竹 奇怪的大叔聽到爆炸聲後衝了過來
那輛破爛的淑女車快得嚇人 感覺會被殺掉所以就死命地逃
第一次為了模擬演唱會的感覺 去向區公所借了公民館來用
50瓦的吉他音箱與定型噴霧 還真的相信世界將有所改變
初戀是從國中就在一起的那女孩 最終沒能修成正果是無妨
可妳別事到如今來跟咱說妳以前很愛找人打炮啊 不過咱那時候是真的很喜歡妳啊
滿懷幹勁來到東京是二十歲那年吧 記得當時還故意用「俺」自稱耍帥啊
第一人稱代名詞是世上最短的自我介紹 所以無論如何咱還是會叫自己「咱」
樂團根本紅不了 打工也提不起勁 與其說是同居,不如說是咱賴在女友的公寓裡
覺得自己太沒用 所以給她炸了份唐揚雞 她竟高興得誇說超好吃還給了咱零用錢
經歷了一些事情於是決定回到故鄉 這樣的落魄出走也不是什麼新鮮事了
要是咱有膽量上吊自殺可能還更體面一點吧 實在沒那個臉去見母親啊
回鄉之後去了好多地方 恐山、千疊敷、佛浦、龍飛岬、十和田湖、八甲田山
奧入瀨溪流、大湊自衛隊、三澤自衛隊、雲谷峠、大間崎 只要一有空……其實也只有空,於是開車去了各種地方
咱原來對咱出生的城鎮真的是一無所知啊 比方說,咱現在住在青森市但這裡在戰時卻曾被轟炸過,史稱青森大空襲,咱竟然連這種事都不知道啊
後山的神社裡,很久很久以前人們進入森林時會將斧頭掛在樹幹上以祈求平安,原來還有這種習俗啊,咱是真的一無所知啊
阿公的喪禮咱去不了 不,該說是咱沒去才對 但這和咱去不了是一樣的吧
很討厭面對人的死亡 燒香的氣味啦,親戚啦,家族團圓啦,全都令咱作嘔 是真的會想吐
是說,記得咱讀國中的時候 曾從阿公的錢包裡面偷了一萬日圓
現在想想,阿公當下絕對有發現錢被偷啦 可咱卻未曾挨過他一次罵啊
阿爸阿母也都明顯變老了 但咱可不會對這種事感傷嘿
阿公的葡萄園也好,小時候養過的那條狗也罷 呃……名字是叫什麼來著?
阿公總是在葡萄園的塑膠布溫室裡削著樹枝
很討厭肥料的味道 後院小屋的盆栽裡面,咱家的鑰匙就藏在那
阿爸曾在漁業合作社工作 還記得咱以前經常在漁港玩
棧橋、消波塊、朱紅色的燈塔 小時候偷抓海膽大人都是睜一隻眼閉一隻眼
和住同個社區的修明一起 潛入阿武的家裡
偷走了他的迷宮組曲 最後被阿母揍了一頓
重新玩了一次迷宮組曲 但如今已感受不到樂趣
懷舊電玩怎麼會這麼無聊啊 真不該變成大人的
玫瑰街道沿線的田地 那傢伙的阿爸,開著拖拉機
在一望無際的地平線 耕耘著生命啊都已經發芽囉
※玫瑰街道的路口處 縣道179與國道279
獻花哀悼默念阿彌陀佛 那傢伙就是在這條路上出車禍過世的
※重複唱誦×2


