2024-03-28|閱讀時間 ‧ 約 36 分鐘

クレディセゾンでDXを進めてきた5年間を振り返る

はじめに

クレディセゾンに来てちょうど5年が経ったので、これまでの取り組みをまとめてみようかと思う。書き進めていくうちにとても長くなってしまったので、1年につき3トピックに絞ってあとはカットした。それでも5年分なこともありかなり長くなったので、目次から各トピックに飛んでもらえればと思う。社内の関係者も読むかもしれず、「自分のやったことが載ってない!」と思うこともあるかもしれないが、内製開発案件だけでも53案件あり全部載せるととんでもない量になるので許してほしい。それから、振り返ってまとめると退職すると勘違いされるかもしれないけれど、退職するわけではありません!

2019年:ゼロからのスタート

1-1. 内製開発エンジニア募集を始める

「日本のそれなりの規模の事業会社の中に、内製開発チームを立ち上げることはできるのだろうか?」

2019年3月、クレディセゾンに来たばかりの私にとってはこの質問への答えは「やってみないと分からない。ただしチャレンジする価値はある」というものだった。

「求人票を書いてあとは人事部でお願いします」なんていうやり方をしてはいけないことだけは分かっていた。そんな態度ではその気になればどこへでも行けるエンジニアの人たちに興味を持ってもらえるはずがない。

そこで、人事や広報などの会社の関連部署には相談して許可を取った上で、個人ブログでエンジニアを募集することにした。

クレディセゾンでエンジニアリングチームを立ち上げます : 小野和俊のブログ先程、クレディセゾンの来期組織のプレスリリースが出ましたが、3/1からクレディセゾン CTOの仕事をメインの仕事にしていくblog.livedoor.jp

5ヵ月かけて32名の方とお話をさせていただき、夏には2ピザチーム(8人)の内製開発チーム「テクノロジーセンター」を立ち上げることができた。

1-2. テクノロジーセンターの4原則

クレディセゾンはクレジットカード、住宅ローンや家賃保証などの不動産ファイナンス事業などを営む金融企業であり、安心感・安定感あるエンタープライズのプロジェクト管理とシステム開発が必要だ。一方で、私自身がベンチャーをやってきたこともあるし、せっかくゼロから内製開発チームを立ち上げるのだから、スタートアップ的なカルチャーとスピード感のあるチームにしたい。

「それなりの企業規模になると、スケールはあるがスピードが犠牲になりがちだと思う。逆にスタートアップだと、お客様規模は何千万人というレベルではない、ということも多いと思う。でもこのチームではどちらかを犠牲にすることなく、『ここにはスケールとスピードとの両方がある』そんな風に思ってもらえるチームを作っていきたい。」そう話しながら内製開発チームを作ってきた。

自ずと、企業の規模、エンタープライズ/スタートアップなど、多様なバックグラウンドを持つエンジニアが集まった。違いが強みにつながることもあれば、違いが争いを生むこともある。モノリシックな価値観で固まったチームにはしたくないが、いつも言い争ってばかりいるチームにもしたくない。そこで、フラットに議論し、差異を強みとして生かせるチームにしていくために、チーム発足のタイミングで「テクノロジーセンターの4原則」を策定した。(そしてこの原則は5年経った今でも掲げ続けている)

テクノロジーセンターの4原則

  1. 「さん」付けの徹底、役職呼びおよび「くん」付けゼロの徹底。
  2. 「HRTの原則」を100%守り切る。頭にくることがあっても絶対に怒らない。(言うべきことは言う。しかしできるだけマイルドに)
  3. 短所ではなく長所を見る。短所は辛くても苦しくても全力で受け止める。
  4. 世の中を良くする、企業を成長させるなど、成果を出すチームであることを最重視する。

1-3. 最初のプロダクト「セゾンのお月玉」

長年ベンチャーをやってきた感覚としては、規模の大きい会社だったとしても、チームを作り始めたエンジニア募集開始日から起算して、遅くとも半年後にはそれなりにインパクトあるプロダクトを出したい。

新しく何か内製開発するなら、お客様接点として明らかに最重要なスマホアプリで何かやりたい。だが、単にデジタルで効率化、というようなそっけないものではなく、「セゾンおもしろいことやるな」と思ってもらえるような、遊び心ある何かをやりたい。1年前の2018年まで10年間と長い期間クレジットカードの基幹システム更改に苦しみ、大型の新しい取り組みがやりにくい状況が続いていたので、その閉塞感を打破するためにも、あえてクレジットカード事業ど真ん中のところで何か大きく動いてみたい。

そんな思いから企画・開発したのが、「セゾンカードで決済すると、500円につき1枚デジタル抽選券が貰え、抽選で現金1万円が毎月1万人に当たる」という「セゾンのお月玉」だった。毎月当たるので、お年玉にかけてお月玉、とした。デジタルに振り切るなら現金など送るべきではないのだが、「少し面白い封筒で現金書留が届く」という、時代に逆行する体験をあえて重視した。

スマホアプリに手を入れるだけならまだしも、カードの決済と連動する企画だったため、長年苦しんで更改した基幹システムとも連携が必須だ。色々想定していなかったトラブルも起きてリリース前日まで手に汗握る日々が続いたが、なんとか予定通りリリースすることができた。リリース後は皆で安定稼働しているかどうか、カード決済動向は何か変わったか、SNSでの反響はどうなのか等をディスプレイに張り付いて見守った。

休眠会員から復活する人が月2万人程度増え、届いた1万円を映えるように撮影してInstagramやX(当時はTwitter)にアップする人が多くそれまで弱かったSNSでのプレゼンスが上がり、Xのセゾン公式アカウントフォロワーは半年で1万2千人 → 20万人程度まで増加するなど、色々な効果があったが、2年ほどすると各種数値が落ち着いてきたこともあり、2年半後には企画部署である私たちテクノロジーセンターからの提案で、役割を終えてクローズすることとなった。だがお月玉PJで内製開発チームも、クレディセゾンのカード事業も、色々なことが動き始めた。

2020年:事業部システム内製化

2-1. 事業部システム内製開発チーム発足

お月玉PJで社内の色々な部門と会話する機会があり、雑談含めて会話していく中で、事業部のやりたいことについてベンダーに見積もりを取ってみたら非常に高額の見積もりが出てきたので断念したという話が多くあることが分かってきた。しかし内容的には内製で割と簡単にできそうに思えるものも少なからずあった。


そこで、これまでのスマホアプリ等のCX(Customer eXperience)のための内製開発とは別に、事業部の戦略実現や日々の業務効率化のためのシステムを内製開発するEX(Empoyee eXperience)のための内製開発チームを作ることにした。お客様体験を磨くための内製化も大切だが、良いお客様体験を生み出すのは、良い社員体験のはず。内製開発チームは、CX(Customer eXperience)だけでなくEX(Employee eXperience)にも注力すべきだと考えた。


このチームでの活動は、各事業部に順にヒヤリングしていき、内製開発の候補となりえるシステムを一覧化し、事業戦略や効果性、内製開発向き/不向きなどを判断していくことからスタートした。

後にこのチームは様々な社内システムを開発・改修していくことになるが、大きな転機となったのは、関わる社員も多いコールセンター向けのシステムをリリースしたことだった。かねてから切望されていた機能を内製開発で短期間に実装してベンダー開発の既存システムに組み込んだこと、また、オペレーター向けに精度が既存のものよりずっと高いマニュアル検索システムを新規に開発したことで、多くの社員から喜びの声が届いた。

この頃から私たちは、「社員置いてけぼりのDX」のようなことにならないよう、経営戦略上優先度の高い開発(レーン1)とは別に、多くの社員が実感を得られる開発(レーン2)も意識的に取り入れながら開発優先度を検討するようになっていた。

2-2. 社内公募開始(総合職→エンジニアへのリスキリング)

事業部のためのシステムを作るためには、事業部や事業そのものを良く知る人の知見が必要だ。だが、その人がシステムについては全然知らない、ということだとITの前提知識の解説に時間がかかってしまいかみ合わない。逆もまたしかりで、内製チームが全然業務に詳しくないということだとビジネスサイドがもどかしく感じるだろう。

そこで、テクノロジーセンターのエンジニアを社内公募してみてはどうかと考えた。クレディセゾンはその当時、テクノロジーセンター以外は基本的にすべての社員が総合職だったので、ITのバックグランドがあるわけではない。兼務で本業の片手間でちょっとずつ勉強、などというやり方ではうわべの知識しか身につかずあまり意味がない。だからここで言う公募は、100%異動してくる前提での公募だ。それに、お月玉PJのことなども振り替えると、社内公募は当初からやっていたCX向けの開発でも同様の理由で実施した方が良い。そこで、テクノロジーセンター全体でエンジニアを社内公募することとした。

誰も手を挙げてくれなかったらどうしようかと不安に思う気持ちもあったが、ふたを開けてみれば、募集人数の3倍近い方からのエントリーがあった。年齢も20代前半から50代後半まで幅広く、様々な部署からの応募があった。後に来てくれた人から聞いたのだが、お月玉で色々反応を見ながら素早く改善を繰り返していたを見て、「あれ作ったチームらしいよ」と興味を持っている社員も割といたようなので、プロダクトを出した後に公募したことが応募につながったのかもしれない。

2-3. 「SAISON CARD Digital」

この頃、クレジットカードの事業戦略を立案する部署で検討が進んでいたプロジェクトのひとつに、「SAISON CARD Digital(SCD)」というプロジェクトがあった。これは、国内初の完全ナンバーレスカードで、最短5分でかんたんにすぐクレジットカードが作れて使える、というものだった。デジタルカードはカード会員向けのスマホアプリ「セゾンPortal」で発行するわけだが、お月玉の一環としてセゾンPortalの一部を内製開発した実績はあったので、アプリに関する部分は内製で開発してはどうか、ということになった。

お月玉の時と大きく違ったのは、お月玉はアプリの一区画をもらいそこでスクラッチで内製開発したが、今回はもともとベンダーが開発していたアプリの各所に手を入れる開発だったことだ。設計思想の一貫性が途中から崩れていたり、リファクタリングが適度に行われてこなかったことのツケが開発の足枷となっていた。例えば当初はこの手の条件分岐はこのクラスに集めようとしていたんだろうな、という箇所以外のところにもコードが散らばってしまっていたりした。だが、「なんで技術的負債の返済に投資してこなかったんですか」と過去の担当者を責めるのも酷な話だし、ベンダーだって限られたコストや納期の中でやっているわけだから、過去のことは仕方ない。だが、今後については、中長期的にはやはりアプリ全体を内製化したい。

その後さまざまな開発を進めながら、2022年にiOS/Androidともにスクラッチで作り直した新アプリへの完全移行が完了した。

2021年: 全社DXへ

3-1. バイモーダルIT組織の実現(情シス部門と内製部門をひとつの事業部に)

2021年、CIOの方が退任することになり、私の方で従来のCTOに加えてCIOも担当することになった。それまでの2年間で内製チームを作って活動していく中でIT戦略部(情シス部門)との接点はもちろんあったのだが、まずはいまどうなっているのかを理解したい。引継ぎも含めて前CIOの方にも参加してもらい部門長を集めて「いまうまく行っていること」「課題」について各自から話してもらい、そこで全体概況を把握したのちに部長との1on1を開き、あらためて各自の思いを聞いた。

うまく行っていることは、生命線となるシステムを預かっているという使命感を持ち、全体としてはクレジットカードの7兆円のトランザクションを回すことができていること。また、チームワークもよく、とりわけ障害の時の一致団結力は目を見張るものがあることなどが分かった。業務のことも本当に良く熟知している。一方で課題として、ITの専門性を磨き続ける、という意味では課題があり、外部ベンダーへの依存が強いことが分かった。

つまりIT戦略部は、バイモーダルITで言うところのモード1に強みを持つ組織だと言える。一方でテクノロジーセンターは、チームの内部で比較的モード1よりの人や仕事とモード2よりのものはあるが、IT戦略部との対比の中ではモード2色の強いチームだと言える。モード1とモード2は全く異なるカルチャーだが、一方の弱みがもう一方の強みであることも多く、必然的に一定程度発生してしまう文化的対立のところさえなんとかできれば、相互補完関係が築けるはずだ。そこで、もともとテクノロジーセンターの原則のひとつでもあった「HRTの原則」をより広範囲に掲げ、半年後の10月にはテクノロジーセンターがIT戦略部に入る形で、モード1の組織とモード2の組織をひとつの事業部にまとめることにした。

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3-2. 「CSDX」戦略を策定し社内外に公表

デジタル推進を担うCDOやCTO、あるいはCIOが着任すると、最初にビジョンをまとめてグランドデザインを提示し、そこから各種具体的な取り組みを進めていくケースが多いようだ。

私の場合には、とにかくまず内製チームを作り、動き始めてみようと考えた。いくつかのプロジェクトを進めてみないことには、クレディセゾンに一番必要なものが何なのかを正しく見定められないと考えたからだ。また、ビジョンより具体的な成果の方が説得力があるとも考えていた。

だが2年間の活動を経て、ITで会社を強くしていく、ということが明確に会社の方針のひとつとなりつつあり、全社でDXを推進していこうという機運も高まっていた。クレディセゾンの考えるDXはどんなものなのかを整理して社内外に提示すべき時期が来ていた。

2年間やってきた中で、いくつか私たちのやり方のキーワードと呼べる考え方も整理されつつあった。例えば、ビジネスサイドと技術サイドの境界線や責任分界点をできるだけ設けず、一緒にゆるやかに連携しながら開発していく「伴走型内製開発」。また、システムが寄与すべきはあくまでもCXやEXであり、DXそのものが主役になるわけではないこと。これらを整理して取締役会等の然るべき機関においても報告・議論した上で「CSDX(CREDIT SAISON Digital Transformation)」を社内外に公表した。

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