此為日治時期 詞曲才子 吳成家和日本女友的悲戀故事 以日文寫成原創繪本 作者 白佳宜
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彼は、松葉杖をついて、彼女と待ち合わせの銀座カフェへ、ぐったりして入ってきた。
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彼の目に、映っているのは、ただあの古めかしい、ぼんやり沈んでいた景色。
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ピカピカ輝いていたのは塵かな?
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いつのまにか、病院の窓とベッドは景色の背景になった。
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そして、彼女はその景色から現れた。
「いつものお席ですね。」
彼女は成家(せいか)を現実に呼び戻した。
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またこうして会えるなんて、夢にも思わなかった
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40年ぶりに来たのに、前と変わらずあった。
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「ゴ(吳)セイカ(成家)患者は、胃出血で入院した」
外から声がして、彼を覚ました。
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「コ...コ」ドアからかすかな声がした。「入りますよ!」
若く綺麗な女医が入ってきた。「大丈夫ですか、セイカ。」
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彼女を見た瞬間、彼は言葉を失った。
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運命の人と出会ったときの感動が胸にあふれたように、
彼の胸を強く打った。
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大正8年から、彼がいた大都会のあちこちで、
あらゆるものが生き生きしていた。
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その上、また彼女もいたから、セイカの青春は、日本で輝いていた。
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彼は元々、音楽を習いに、日本に留学した。
古賀政男(こが まさお)の下で、自分の曲技(きょくぎ)を磨くためにがんばってきた。
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その陽気な場所で、彼が、一生運命を変えた人と出会えた。
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年月を重ねれば重ねるほど、その人がどれほど大事であるかがわかる。
最近、彼はそうつくづく思った。
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コーヒーの湯気が上がって、彼は現実に引き戻された。
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むこうに座ったのは、優しい彼女と彼たちの子供。
彼女が一人で息子を育てた。
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その人の強さは、セイカの心を動かし、涙をボロボロ流した。
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彼女といた景色は、セイカにとって、
永遠に忘れられなかった。
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大正二十三年、船に乗って、台湾へ帰った彼は、
親の反対で、彼女と別れなければならなかった。
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むこうに座った二人は、彼にとって、遠い未来から来たようだ。
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いつどこにいても、彼の心の中の深い底に、
彼女はいつも潜んでいた。
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彼は今でも、彼女の居場所を探していた。
いつか会えますように、そう思っていた。
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涙であふれた目は、おぼろげな視線で、息子の方を見つめた。
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俺の側から離れて、色々あったのかな。
それでも、生きてくれていた事は本当によかった。
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四十年の時間は、彼達の橋であり、わだかまりだ。
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ただ、静かにそこに、ずっといった。
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たぶん、音楽だけで、疲れた心を癒したのか?
俺の心を彼女に、知ってほしかった。
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彼は「港邊惜別」という曲を残した。
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彼女と再会した後、
彼はまるで、全ての願いが叶ったように、この世を離れた。
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これは短い間の恋愛だったけど、長い時間をかけて、
ようやく、その終わりを迎えた。
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...... 恋愛の夢
夢に破れた
風が 冷たかった ......
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......一夜(いちや)の悲しみのあと
星が涙みたいに
別々に 離れてゆく......