ルイ14世-太陽王
世界のファッション産業を見てみると、建築、服装、美術、工芸、技術など、そのすべてが17世紀のフランス文化の影響を受けていると言えるでしょう。またその全てがフランス国王であったルイ14世から始まりました。
ルイ14世は17世紀のフランスを指揮し、精密さと完璧さを追求していたと言えます。ルイ14世は美を追求する中で、「システム」の構築をより重視していました。建築、彫刻、音楽、美術、舞踊の分野では、その道のプロを育成するための王立や国家専属のアカデミーが設立され、貴重な経験や技術が継承され、職人たちが発表した論分や記録はその当時のあらゆる業界における技術水準とまでされました。遠く離れた清の国にいた当時の皇帝・康熙帝でさえもフランスの影響を受けていたと言われています。有名なベルサイユ宮殿はルイ14世の指導のもと、各アカデミー出身者が才能の総力を結集して建設されました。
ベルサイユ宮殿-究極の香りを求めて
ベルサイユ宮殿は、ルイ14世が究極の美を追求した結果、フランスの香水産業をより発展させる契機となりました。当時のルイ14世は、入浴によって毛穴が開き、病原菌が体内に侵入すると考えており、彼は生涯のうち7回しか入浴しなかったと言われています。しかし、体臭を隠すために、調香師に命じて、様々な香水を作らせ、毎日異なる香りを身につけるようにしていました。さらにルイ14世は自らも香水の調合に加わり、ベルサイユ宮殿の庭師にバラとアヤメを植えるように命令し、バラの花を調香師に提供し、改良を繰り返したバラの花はより多くの香りを抽出できるようになりました。
お金をかけ、またお金を稼いだ香水とガラス
その頃、フランスでは王宮貴族たちがこぞって香水を使い始めたので、香水を入れるガラス瓶の需要も同時に増えていきました。それ以前、ヴェネツィアはヨーロッパにおけるガラスと鏡の製造の中心地とされ、あらゆるガラス製品がヴェネツィアで製造された後、他の地域に輸出されていました。ルイ14世はヴェネツィアがガラス貿易を独占し続けるのを防ぐため、スパイ活動を行い、ヴェネツィアのガラス製造技術を盗み、その後パリで「王立ガラス工場」を設立しました。1672年から、フランスのあらゆるガラスは王立ガラス工場から提供されるようになりました。このような環境の中で、フランス王室は究極の香りと美しさを併せ持つ香水製品を急速に開発することができました。
香水ガラスは相対性理論の基礎を築き上げた
ルイ14世は香水愛好家であったことと加えて、航海や文化的・経済的発展における継続的発展には天文学への理解が重要であると主張していました。そのため、ルイ14世は1666年にパリ天文台の建設に賛成し、後にパリ王立科学アカデミーを設立しました。香水のガラス瓶はより透明で曲面が必要であったため、王立ガラス工場は様々な曲げガラスの製造技術を次々に生み出しました。このような曲げガラス技術は同時に天体望遠鏡のレンズの中にも使用され、パリ天文台の研究者たちは1676年に「光の速度には限界がある」ということを発見しました。この重大発見はのちの物理学において相対性理論の発展の基礎を築きました。
ほんの微量な変化までにもこだわった究極の香り
ルイ14世統治下のパリ王立科学アカデミーが化学と物理学の発展を促進し続ける中、ベルサイユ宮殿の調香師たちは抽出方法の違い(アンフラージュや蒸留法)によって、抽出されるバラの香水の香りに違いが出ることに気づきました。現在、ローズ・オットーは水蒸気蒸留法によって抽出されたバラの香りとして一般的に知られています。蒸留法技術は、その当時の調香師や職人たちが生み出した技術によって生み出されました。
現在の抽出技術によると、天然バラの香りを抽出するには、主に水蒸気蒸留法、分子蒸留法、超臨界流体抽出システムの3種類があります。これら3つの抽出方法から得られるフレーバーの分子の種類と内容量は大きく異なり、フレーバー分子は以下のように分類されます。
水蒸気蒸留法のフレーバーベース:シトロネロールとゲラニオール、内容量は約48%
分子抽出法のフレーバーベース:フェネチルアルコールとシトロネロール、内容量は約35%
超臨界流体システムのフレーバーベース:フェネチルアルコールとシトロネロール、内容量は約29%
上記の結果から、分子抽出と超臨界流体抽出システムの主な香り分子は同じであることがわかります。しかし、残り半分の天然分子は種類や内容量が異なり、バラの香りの現れ方にも影響するため、調香師は調香の際、抽出方法の違いが香水全体の香りの表し方に与える影響を考慮する必要があるのです。
例えば、ローズに含まれるフェネチルアルコールは、異なる水溶性香水の原材料との相互溶解性が高いため、香りの分配バランスがフローラル系やウッディ系の香りの性能と香りの持続の安定さに影響を与えます。また、抽出された天然ゲラニオールの極めて高い揮発性は、他の柑橘系の香り分子の拡散にも影響を及ぼします。
ローズの香り、ベルサイユの交響曲
プロの調香師にとって、同じバラの抽出の仕方や比率を変えることで、甘い香りのバラ、ハーブの香りがするバラ、柑橘系の香りが長く続くバラ、あるいはスパイシーで主張の強いバラ、さまざまな異なる顔を持つバラを作り出すことができます。ルイ14世が「香水は王宮の音楽のようなもので、その全てが美しい和音でできている」と書いたように。
この記事を読んだ後、バラ系の香水をつける際には、そのほんの一滴が相対性理論の発展において重要な貢献をもたらしたことを頭の片隅にでも思いだしてくれると嬉しいです!