
四年前の水曜日、午後四時、僕は小さな大学の講義室で、卒業を前に一人静かに座っていた。
この大学を出る日が、とうとう来たのだ。
僕のカバンの中には、先生から借りた本が一冊だけ入っていた。
返すタイミングを逃していたけど、今日こそきちんと返そうと思っていた。
先生の研究室のドアの前で立ち止まり、本をそっとポストに入れた。
その瞬間、初めて先生に会った日のことを、はっきりと覚えていた。
「君はきっと、優しくて強い人になるよ」と言ってくれた、あの笑顔を。
何度も忘れそうになったけど、僕はその言葉だけは忘れなかった。
駅までの帰り道、奨學金の最後の一回分を払いに事務室へ立ち寄った。
あの日々が、どれほどの価値を持っていたのか、今はようやくわかる。
よねんまえのすいようび、ごごよじ、ぼくはちいさなだいがくのこうぎしつで、そつぎょうをまえにひとりしずかにすわっていた。
このだいがくをでるひが、とうとうきたのだ。
ぼくのカバンのなかには、せんせいからかりたほんがいっさつだけはいっていた。
かえすタイミングをのがしていたけど、きょうこそきちんとかえそうとおもっていた。
せんせいのけんきゅうしつのドアのまえでたちどまり、ほんをそっとポストにいれた。
そのしゅんかん、はじめてせんせいにあったひのことを、はっきりとおぼえていた。
「きみはきっと、やさしくてつよいひとになるよ」といってくれた、あのえがおを。
なんどもわすれそうになったけど、ぼくはそのことばだけはわすれなかった。
えきまでのかえりみち、しょうがくきんのさいごのいっかいぶんをはらいにじむしつへたちよった。
あのひびが、どれほどのかちをもっていたのか、いまはようやくわかる。
四年前的星期三下午四點,我獨自一人坐在小小的大學教室裡,靜靜地面對畢業前的最後一刻。
這所大學,我終於要離開了。
我的書包裡,只有一本從老師那裡借來的書。
原本想說早點還,但總是錯過機會,今天終於決定歸還。
走到老師研究室門前,我將那本書輕輕放進郵箱。
那一刻,我清楚地記得第一次見到老師的那天。
他笑著對我說:「你一定會成為溫柔又堅強的人。」
雖然很多事我都忘記了,但這句話我始終記得。
在回車站的路上,我順道去辦公室繳了最後一次的獎學金款項。
那段日子,到現在我才真正明白它的珍貴。
Four years ago on a Wednesday at 4 PM, I was sitting quietly in a small university classroom, facing the final moment before graduation.
The day I would finally leave this university had come.
In my bag, I had only one book, borrowed from a professor.
I had missed several chances to return it, but today I was determined to return it properly.
In front of the professor’s office, I paused, then gently put the book in the mailbox.
At that moment, I vividly remembered the day I first met him.
“You’ll surely become a kind and strong person,” he said with a smile.
I had almost forgotten many things, but those words always stayed with me.
On the way back to the station, I stopped by the office to pay the final installment of my scholarship.
Only now do I realize how valuable those days were.