ブルーチ
フランス料理では、ワインと料理との組み合わせがとても重要な要素とされています。メニューを注文するとワインソムリエがワインの種類、産地の特徴、そして注文した料理とお酒に合ったハードチーズ、ドライチーズ、ソフトチーズをそれぞれ紹介してくれます。数多くのチーズの中で私個人ブルーチーズの強烈で独特な匂いは今までで最も印象に残っています。(一部のブルーチーズは本気で臭いですが、、。)
ブルーチーズは青カビを発酵させて作られるチーズで、熟成環境の違いによって様々な異なった風味を生み出します。ほとんどのブルーチーズは、塩辛いナッツのような風味と金属製品がカビたような独特な匂いをもち、多くのグルメレビューを見てみると、このサビのような匂いが苦手だと感じる人も多いそうですが、この特別な風味はチーズに含まれる天然成分によるものです。
ブルーチーズ以外にもメタンチオールは、ナッツ類、チーズ、ワインなどの多くの自然食品に含まれています。メタンチオールは口の中や体の表面にも存在し、口臭や汗の匂いの原因のひとつです。通常、このメタンチオールは不快な臭いを発すものです。しかし、香水の化学はとても不思議なもので、生物の自然作用を調整しながら、適切な環境条件下のもとメタンチオールとメルカプタン類天然物質はトロピカルフルーツのような心地よい香りを作り出すのです。
多くの人がフルーティな香りを好むのは進化の過程によるもの
多くの人がフルーティな香りを好む秘密は天然物質に含まれるメタンチオールとそのほかの植物に含まれる有機酸が混ざり合うと、エステル化反応が自然と起こるからです。この一連のエステル化反応によってチオールと有機酸の分子構造が結びつき、変化を繰り返しながらチオールと酸のエステル構造が形成され、爽やかで甘いトロピカルフルーツのような香りに仕上がっていくのです。さらにこれらの物質の分子量は比較的小さいため、匂いが拡散し空間に充満しやすい特徴を持ち、極めて低い濃度下の中でも独特なフルーティさをはっきりと醸しだすことができるのです。人類は遡って霊長類から進化し、太古の祖先は果物を食べることで良質なカロリーと栄養を補給していました。また、他の動物を狩る際に自らの命を守ることができました。このような長期にわたる変化の過程の中で、霊長類も人類も果物に対して非常に敏感な直観的反応を示し、果物がもたらす匂いを好むようになったと言われています。
また嗅ぎたくなるのは天性の直観的反応によるもの
大脳辺縁系は人間の脳の感情の中枢であり、匂いは大脳辺縁系に直接届くため私たちはより様々な感情を直感的に生み出し、それに応じて反射的に行動を起こすことができる。そのため、チオール酸エステルの成分を嗅ぐと、そのフルーティーな香りによって脳の大脳辺縁系は非常に心地よい気分になり、この時、脳は香りの発生源を探そうと一連の直感的反応を示します。これらの反応は「もうひと嗅ぎ」→「どこから匂っているのだろう」→「匂いの発生源の特定」→「さらにもう一度嗅いでみよう」の順番で一連の動作が起こります。脳がこれらの反応をした後、次は直感的ではなく意識的にこの後の自分の行動を考え始めます。
思わず振り返って嗅ぎたくなる香り
香りは人間の感情に極めて直接的な影響を与えます。そのため、私たち調香師が香水の配合をデザインする時、ウッディノートやフローラルノート、オーシャンノートの香りを調香するだけでなく、どのような場面で使用されるのかも考えています。人々が思わず振り返ってまた嗅ぎたくなる匂いをデザインする場合、反応がスピーディで尚且記憶性が高く、あまりキツ過ぎない香りを目指し吟味します。この場合、調香師は様々な異なるフローラル(微量のエチノールを含む)と植物の葉っぱ(有機酸を含む)を極めて絶妙で正確な濃度で混合し、熟成過程(エステル化)を経て、人々の五感にとって心地のよい自然なフルーティーな香りを生み出していくのです。この香りの特徴は単にフルーティーな果実の香りなのではなく、みずみずしく透き通った透明感のある香りであることが重要です。首の後ろや手首に香水を振ると香りが私たちの体温と素早く反応しどんどん充満していきます。このようにして思わず振り返って嗅ぎたくなるような人々を惑わす匂いを演出するのです。
もし今異性からモテたいと思うのなら花や葉の香りが配合されたフルーティーでフレッシュな香水を選ぶことをおすすめします!